第198目 12月29日(金) はれ

旅の終わり


 長かった旅も今日が最後。明日からはアクセス数の関係ない、自由な日々が待っているのかと思うと、目覚めもいい。
 トイレの前で歯をシャカシャカ磨いていると
「ギイイイイイイイイイイン!!」
 けたたましいバイクの排気音が鳴り響いた。おおおおっ、来たな。ホームページで知り合った、ウィリー祐一さんが早朝の襲撃にやって来た。
「おはようございます、どーも、初めまして」
 この旅の間、ネット上でしか知らなかった人達とどれくらい出会い、こんな風に言葉を交わしたことだろう。今ではネット上で名前だけを知っている人と会うことも、旅先で偶然に人と出会うことも、同じことのような気がしている。人との出会いは全て偶然にして必然なのではないか、そう思うのである。
 駐車場でウィリー祐一さんに得意のウィリーを一発(実際は写真撮影のために5〜6回やってもらったんだけど)決めてもらい、2台で富士方面へ向かう。

 冬型の気圧配置が緩んだのか、昨日に比べると今日は随分と温かい気がする。
 昨日のアクセス数は嬉しいことにいつもの2倍の2474、今日は懐の方も温かい。この金額なら、牛丼大盛りみそ汁玉子付きも全然夢じゃないぞ。それどころか豪遊ができそうだ(2500円で豪遊はないだろ…)。
 よほどのトラブルがない限り今日ゴールできるのは確実、気分は今日の青空の様に晴れやかだった。
 が、しかし。距離が伸びる程にひとつだけ気に掛かることがあった。実は2、3日前から徐々にクラッチが滑り出し、今日は坂を上るのがかなりきつくなってきたのだ。
 バイパスになると車の流れが速く、とてもついて行けない。最後までクラッチが持ちこたえるか心配でたまらない。突然走らなくなる、ということはないと思うが。今日で最後なんだ、何とかゴールまで持ってくれ〜、祈るような気持でアクセルを開けた。

 道の駅「富士」までウィリー祐一さんとランデブー走行。向こうのバイクはSLの3倍も排気量があるビックバイクなので、ペースを合わせるのが大変だっただろう。
 こんな風にネットで知り合った人と一緒に走るのもこれが最後だろうな…、と思っていると、ウィリー祐一さんが
「これから向かう『柿田川湧水郡』で何人か待っているみたいだよ」
 と言うではないか。知らなかった、それは楽しみだ。
 ウィリー祐一さんに見送られ、国道1号線を西へまっしぐら。

 信号待ちをしていると、歩道でパタパタと旗を振る姿が目に入る。
 まさか…、ウソ〜、そうだ、ちょくさんとくらもちゃんだ!!
 出発当時からネットで、キャンプで、インターネットジャーニーを熱心に応援してくれていたふたり。ここまで来てくれたのか…、感激が胸に込み上げてくる。ふたりの手には「感動のゴール」と書かれた旗が誇らしげにひらめいているではないか。イラストまで入っていて、何だか照れ臭い。

 ふたりと共に「柿田川湧水群」を覗きに行く。この湧水はとても国道1号沿いにあるとは思えない、そこだけがまるで別世界のようだった。湖底の砂をモクモクと巻き上げながら、湧き出す透明な水はまるで宝石のような美しい。大自然の圧倒的な美しさには、どんな人工物も勝てないと思う。
 別の展望台へ行くと一瞬水底が変色したのかと間違える程、おびただしい数の魚が川を泳ぎ回っていた。その魚たちを狙って白いサギが水に飛び込む。そこはまさに自然の楽園、この風景は数百、数千年前から変わっていないのだろう。そんな風景が見られることを幸せに思う。この湧水地はオレが訪れた名水100選の中でも、特別な美しさを誇っていた。

 さてさて、名水の次は牛丼だ。
 ふたりを強引に誘い込んで某牛丼屋へ向かう。
「大盛りにみそ汁と玉子!!」
 これが言いたかったんだよね〜。今日で旅が終わることを実感する。だが、そんな感傷に浸る間もなく胃袋へ消えて行った。

 そこへさらに遅れてジャメスがバイクで合流した。
 ジャメスとは福島県と関東キャンプ、自転車で日本縦断中している最中には、九州で会った。ということはこれで4回目ということになる。何かと縁があるヤツなのだ。

 バイク4台が連なって次の名水に向かっていると、突然車が横に並んできた。何かと思いウインドを覗くと、富山でお世話になったわいさんではないか。
 みんなに囲まれて最後の走行、まるでウイニングランみたい。

 次の名水「洒水の滝」はもともと修験者の修行の場だったところ。これまでにいくつもの名水を回ってきたが、滝修行の場が名水になっているというのは初めて。名水も多種多様なんだな。
 5人でゾロゾロと歩き楽しく見学した。
 日程からして訪れられる名水はあとひとつ、「秦野湧水群」だろう。記念すべき最後の名水をみんなで訪問する。夜の帳も降りて辺りはすでに真っ暗闇。名水の湧く菖蒲園の周りは竹林に囲まれているため、ジャメスの懐中電灯を頼りにゆっくりと進んで行った。懐中電灯で名水を探すというのも始めてだな。
 物陰にチョロチョロと流れる「浄福水」を見つけて、お土産にするためにボトルに詰め込む。家でお茶を入れて飲もう。
 これで最後の「名水めぐり」は終了。
 名水100選を全て訪問することはできなかったが、名水を通じて日本の現状を知り、自然環境を考えることができた気がする。ただ、資金ルールがある上に約200日間で全てを回ろうというのは無謀だったかな。いつかまたじっくりと名水を訪問してみたいと思う。

 名水が終わったところでマクドナルドへ入りみんなでお茶にする。昨日までは道路沿いにあるファーストフード店やレストランも、オレにとってはバーチャルな存在だったが、今日は違う。約4000もアクセスがあるのだから、入ろうと思えば入れるリアルな存在なのだ。
 だけど入るのはマクドナルドなんだよなぁ、ハハハハハ。習慣はなかなか抜けないものなのです、ハイ。
 マクドナルドでわいさんを見送り、4人で一緒に我が家へ向かう。さあ、いよいよゴールだ。このまま行けばクラッチもどうにか最後まで持つだろう。

 相模原17kmの文字。初めて自分の住む町の名が標識に出てきた。もう少しで家に帰れるのか…としんみり。
 最後の交差点を右折して、次の自動販売機の路地を…あれ、道路工事をしているのか大きな塀に囲まれている。出発前は何もしていなかったのになぁ、時の流れを感じる。
「ピッピッピーッ!!」
 家の前でホーンを鳴らすと
「おかえりーっ」
 ヒロコの声が聞こえてきた。「いま帰ってきたよ〜長い間ご苦労さん!」と抱き合いたいところだったが、みんながいるので控えておこう。
「かんぱーい!!」
 最後までこの旅に付き合ってくれたみんなに上がってもらい、一緒に祝杯をあげた。そしてチャットを使って全国のみんなと同時に乾杯した。
 この日をどれだけ夢見たことだろう。でも本当に旅が終わったのか…、何だか実感が湧かない。
 ふたりで水入らずもいいが、この方がインターネットジャーニーらしい気がする。インターネットジャーニーをやって良かった。素晴らしい旅をありがとう。今、最高に幸せだよ。

前日の旅日記を読む

 走行距離/221km 総走行距離/25,309km

 宿泊地/藤原家<神奈川県相模原市>
 食事   ピザまん お茶
    牛丼 玉子 みそ汁
   夜 豚汁他
 今日の入金額/2,474円 今日の出費/1,564円
 総残額現金3,023円 クオカード&ギフトカード372円