第195目 12月26日(火) はれところにより

初雪に震えながら


 テントの外が明るい。時計を見ると7時を回っていた。慌ててパソコンを開き日記を打ち始める。
 すぐ目の前が海なので水平線から太陽が顔を出すと同時に陽がテントに当たる。お陰で8時前だというのに、テントの中が少しばかり温かい。いい場所にテントを張っていたようだ。
 ラジオでこの冬一番の寒気が来ていると連呼しているが、海岸線はそれほど気温は下がらないよう。

「大したことないじゃん…」
 と気を緩めて走っていると、国道306号と合流した途端に風が冷たくなった。
 寒さで、指先、つま先、膝小僧の感覚がなくなって行く。さらに顎まで痺れ始める、顎ヒゲがなかったらもっと冷たいんだろうな、生まれて初めてヒゲが濃いことを有り難く感じる。役に立つこともあるんだなぁ。

 下北山町に入るとついにチラチラと雪が舞い始める。海岸線は青空だったのに…、気がつくと空は真っ白になっていた。
 三重、愛知、岐阜の山沿いでは昨日から雪が降り続いていると言っていたが、まさか昼間に降られるとは思わなかった。標高が上がるに連れて路肩や山肌に積もる雪の量が増えて行く。
 今、道の雪は溶けているがこの先積雪は大丈夫なのか?通行止めになっていないのか?不安を抱えながらバイクを走らせる。
 紀伊半島のど真ん中に名水「洞川湧水郡」がなかったらこの道を走ることはなかったと思う、恐らく海岸線を回っていただろう。さらに出発が遅れたことでこんな時期に走ることになってしまった。悪いことは重なるものなのだ。
 涌水群に向かう国道309号との分岐点に着くと、入口に「行者還トンネル全面通行止め」の立て看板が…。
「ウソ…通れないの!?ここまで来たのに…」
 どうやら予定のルートでは行けないらしい。そうなると国道169号で吉野まで北上してグルッと回り込まなくてはならない。別のルートで行くとなるとザッと見積もって50km以上は余計に走らなくてはならなかった。
 この寒さと雪の中をさらに走るのか…、もし行けたとしても山の中で日が暮れちゃうだろう。山で野宿はさすがにきつい…。よし、決めた、洞川涌水群行きは諦めよう。正直、この悪天候以上にそこまで走る気力も体力も元気もなくなっていた。
 日本の名水100選を全て回ろうとしていたが、アクセスが足りずここまで「富山・立山玉殿湧水」、「島根・隠岐諸島の壇鏡の滝と天川の水」、「鹿児島・屋久島宮之浦岳流水」の4カ所を諦めてきた。この4カ所以外は自走で行けるところなので、全て回ろうと頑張っていたが、ついに諦めることにした。
 とにかく時期が悪すぎる。積雪や凍結を心配しながら走っていたのでは、とてもじゃないが名水を楽しめない。ここから天気や気温の影響を受けない名水だけを訪ねることにしよう。

「おおおっ、凍ってるよ…怖〜っ」
 トンネルを出ると路面の水が凍っていた。雪の上ならば何とか走れるが、氷はどうにもならない。光っていないところを選び、恐る恐る通り抜けて行く。ああ怖かった。それから先は「凍結注意」の立て看板が現れる度に背筋が凍り付いた。
 山岳地帯はなかなか距離が伸びず、伊勢市に着いたときには薄暗くなっていた。
 猛スピードで県道を駆け抜け、ギリギリセーフで「恵利原の水穴」に到着した。夜の霊地はどうも不気味で怖い。水を飲み写真を撮り終えると大急ぎでバイクに戻った。

 夜は五十鈴川沿いの河原にテントを張った。昨日ほど風は強くないが冷え込みは厳しい。冷たくなった手を時々脇の下で温めながらパソコンを叩いた。
 このペースで進めたら後3日ぐらいで家にたどり着けるだろうか、少しずつだが着実にゴールが近づいている。長かった日本一周の旅も先が見えてきたようだ。

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 走行距離/238km 総走行距離/24,605km

 宿泊地/五十鈴川河原<三重県伊勢市>
          (N 34°  27′58″ E 136°  43′47″)      
 食事   肉まん コーヒー
    カップヌードル
   夜 マカロニ ミートソース
 今日の入金額/1,083円 今日の出費現金1,244円 カード176円
 総残額現金3,055円 クオカード&ギフトカード550円