第184目 12月15日(金) はれ

沖縄ラストナイト


「ああ、よく寝た、やっぱり陸が一番だなぁ〜」
 今日は天気も良く温かそうだ。朝メシ用の水を汲みに行くと、以前何度か話をしたハレーマンが前から歩いてきた。
「あれっ来てたんですか?」
「昨日の夜中にね」
 どうやら彼も有意義にアイランドライフを送っているよう。
 挨拶を交わすと「石垣はどうでした?」と離島の話が始まる。今回ハレーマンは離島へ行く予定はないようだが、やはり気になるよう。簡単に掻い摘んで話をする。

 風が当たらないようキャンプ場の南端にテント張ったので、北にあるトイレに行くのにキャンプ場を横断しなければならなかった。ザッと見たところテントは20張りくらい、見覚えのあるテントとないテント、丁度半分ずつくらい。僅か9日間離れただけなのに、随分変わったような、変わらないような…。でもやっぱり懐かしかった。

 ラーメンを作っていると大きなバックパックを背負った男がノッシノッシと歩いてきた。何だか髭面で怖そう(人のこと言えるか?)。ウロウロと歩き適当なサイトを探している様子。旅人というよりも山男という風貌がこことはちょっと不釣り合いな感じがする。
「こんにちは〜」
 と愛想良く声をかけてみると、何やら身内を捜しているらしいことが分かった。このキャンプ場の端にある売店が連絡先だったが、閉まっているので分からず、それらしきテントも見当たらないという。
 身内ならかなりせっぱ詰まって探しているのか、と思いきや
「アハハハ、そんな大した事じゃないですよ〜、いたらいいかなぁ〜位で来ただけですから」
 と笑い飛ばす。
 その身内というのは兄貴だということを後で教えてくれた。

 山男の「これから北極へ行く」という言葉から、急激に話が弾み、「まあ旦那、突っ立てないで早いとこテントを張って、お茶でも飲みながら語りやしょうや」となる。
 その山男は川口“ブービー”伸彦という名で、冬季のカナダ北極圏を自転車で走ったという気合いの入った男だった。ブービーが走ったルートが偶然にもオレが十数年前走りたいと思っていたルートだったので、根ほり葉ほりその時の話を聞いた。
 ついでにその時の写真を見せてもらう。やはり極地の自然は雄大だ、そして温かい南の島で見る北極の写真は格別の味わいがあった。極地への思いが再び沸き上がってきた。
 冗談の分かる楽しいヤツなのでもう少し一緒にいたかったが、オレは、今夜は浦添へ行き、明朝のフェリーで沖縄を離れなくてはならない。他にも日記など今日中にやらなければならないことが、まだいくつも残っている。余りここで長居もしていられない、名残惜しいがバイバイだ。
 有り余る情熱とパワーをひとつのことにぶつけているというのは凄く気持いい。たとえお金にならなくても、地位や名誉は手に入れられなくても、やりたいことがあるって素晴らしいことだよ。ブービーに会って改めてそう思った。

 名護の図書館で一日分の日記を書き上げすぐに南下、那覇の隣町「浦添」へ向かう。実はこの町には「遊びに来て是非話を聞かせてください」とメールをくれた吉野さんという人がいて、連絡を取り合い是非会いましょうとなったのだ。

 日が暮れてから那覇へ入り、母親から頼まれた「シークアーサー」を捜して賑やかな通りへ入っていった。
 実はつい3日ほど前、突然母親から携帯へ電話がかかってきたのだ。これまで母親から電話がかかってきたことは一度もなかったので、一体何事が起こったんだ、事故か不幸が、まさか入院したとか…、携帯の着信歴を見て慌てて電話をすると
「ちょっと、あんた今沖縄にいるんだって!?丁度いいわ、それならシークアーサー買ってきてよ、高血圧にすごくいいんだって、それに血をきれいにするらしいのよ、頼んだわよ…じゃあねぇ〜」
 オレの心配などどこ吹く風、脳天気な声がテントにこだました。
「何事かと思えば、お土産かよ〜、まあいいか、それだけ平和だってことだもんな」
 小さな店がたくさん並んでいてお土産屋も幾つかあった。その中の一軒へ入ると100%の原液が売っていた。これはアクセスとは別ということで買い込む。

 適当な場所へ行きメールを送信。
 バイクに戻ると買い物袋を下げた男の人が「藤原さんですか?」と声をかけてきた。嶋さんという人でインターネットはしていないが、バイクが好きでこの旅のことも知っているという。
 沖縄でこんな風に話しかけられるとは思っていなかったので、嬉しくなって長々と立ち話をする。最後には「差し入れ」と言って沖縄限定のオリオンビールを一本プレゼントしてくれた。感謝感激大波小波。思わぬ出会いとプレゼントだった。

 それから数十分後に吉野さんと合流、お宅へお邪魔することになった。
 吉野さんは宮城県のさばみそと沖縄のユースホステルで出会い、そのときインターネットジャーニーの話を聞いたらしい。さばみそから沖縄にはサポーターがいないと聞き、立候補してくれたということのようだ。人の繋がりって凄い。
 吉野さんは医療機器の仕事をしていてあちこち飛び回っているらしい。沖縄に赴任してきてまだ日が浅いが沖縄のことを色々教えてくれた。
 日曜が休みの店が多いことや、飲み屋の始まる時間が遅いこと、おかしな運転をする人が多いことなど、知らないことを色々教えてくれた。
 旅する以上にそこに住んでいると、もっともっといろんなことが分かるんだろうな。転勤が多いらしいが「旅をしているみたいで面白いよ」、と笑った。

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 走行距離/95km 総走行距離/22,413km

 宿泊地/サポーター吉野さん宅<沖縄県浦添市>
          (N 26°  15′--″ E 127°  43′--″) 
 食事   ラーメン
    バナナ 食パン グレープジュース
    カレーライス
 今日の入金額/1,405円 今日の出費現金436円 カード1,424円
 総残額現金16,307円 クオカード&ギフトカード1,718円